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ゲーム、予測市場、そしてベッティング:メディア企業はいかにゲームの仕組みを活用してオーディエンスを維持しているか

Kateryna Skrypnyk
執筆者 Kateryna Skrypnyk
翻訳者 Hanako Takagi

外部トラフィックの流入源が減少する中、出版社はインタラクティブなフォーマットへとますます移行している。ゲームの仕組み(ゲーミフィケーション)は、サブスクリプション型プラットフォーム内で読者を維持するための重要な手段となっている。例えば、ニューヨーク・タイムズはシンプルなパズルを数百万ドル規模のサブスクリプション事業へと発展させており、2023年末時点でNYT Gamesは200万人以上の購読者を獲得していた。

2020年以降、ガーディアンはゲームセクションを独立した有料アプリ「Guardian Puzzles」を通じて収益化しており、2025年までにユーザー数は170万人を超えた。ワシントン・ポストもゲーム分野のポートフォリオを積極的に拡大しており、同紙によれば2022年から2023年の間にゲームコンテンツに対する読者エンゲージメントは70%増加した。その結果、より多くの報道機関がゲームを単なる副次的な製品ではなく、戦略的優先事項として扱うようになっている。

ゲームがサブスクリプション戦略の中心になった理由

ナイトが引用する調査によると、ニューヨーク・タイムズにおいてはニュースとゲームの組み合わせが購読者維持の最も強力な要因の一つとなっている。同社は、Mini Crosswordのようなシンプルな形式であっても受動的な読者を日常的なアプリユーザーへと変えられることを示してきた。ゲームはすでにメディアグループ全体のプロダクトラインにおいて大きなエンゲージメントを生み出している。

Mini Crossword、Connections、Spelling Beeは日常習慣を形成する。ユーザーは情報を得るためだけでなく、その“儀式”そのもののためにアプリへ戻ってくる。イギリスの新聞テレグラフも同様の傾向を報告している。パズルやクイズ専用セクションを立ち上げた結果、ゲーム形式の利用者はニュースのみを閲覧するユーザーよりも平均して週に2日多くアプリを開いていた。これはリファラルトラフィックがより予測しづらくなり、オーディエンス獲得競争が激化する中で特に重要である。

ガーディアンは、ゲームの仕組みが既存のメディア構造にどのように統合できるかを示す良い例である。2020年2月に有料アプリ「Guardian Puzzles」を開始し、週15本のクロスワード、毎日の数独、15,000以上のアーカイブを提供した。2025年5月には専用のPuzzles Hubを導入するため再設計が行われ、さらに2025年10月には単語や数字を使わないゲームも追加された。フットボールゲーム「On the Ball」や映画テーマのパズル「Film Reveal」が導入されている。現在、170万人以上がGuardian Puzzlesを利用している。

ライブイベントが示すオーディエンスのロイヤルティ

オーディエンスの関心の強さを示したのが、Mini Crossword10周年を記念して開催された初のNYT Gamesライブイベントである。イベントはグリニッジ・ビレッジのRocco’s Sports & Recreationで開催され、数百人が来場した。収益化は行われず入場も無料だったが、強い反応を生み出し、事前にMini Crossword Hall of Fameへスコアを送信したユーザーは17,000人以上にのぼった。

これは、読者がNYT Gamesのプロダクトにどれほど深く関与し、アプリの外でもブランドと交流しているかを示している。このようなイベントは、ゲーム領域が独自で強いロイヤルコミュニティを構築していることを裏付けている。

リファラルトラフィック減少の補完手段として

多くの出版社は、減少するリファラルトラフィックを補う手段としてゲームを捉え始めている。こうした背景の中で、タイムは独自のゲーム展開を進めている。2026年5月、同社はウェブサイト上でデジタルゲームの提供を開始した。これには、データ企業KalshiおよびPolymarketの情報を基にしたファンタジー予測市場ゲーム「Market Movers」や、過去の雑誌表紙を使ったパズルが含まれる。Axiosによれば、これは登録型ペイウォール導入計画と同時に進行している。

他の出版社も同様の動きを見せている。エンターテインメントサイトVulture(ニューヨーク・マガジンおよびVox Media傘下で映画、テレビ、ポップカルチャー批評を専門とする)は、Movie Gridと共同開発した映画トリビアゲーム「Cinematrix」を開始した。このゲームは商業的に成功し、HuluやFocus Featuresといったスポンサーを獲得している。これらの取り組みは、従来のトラフィック流入チャネルが弱まる中で、出版社が新たな滞在時間確保の方法を模索していることを示している。

予測市場とベッティングの展望

この流れの中で、次の自然なステップとしてベッティング機能や予測市場の導入が挙げられる。これらの仕組みは、ユーザーの再訪頻度を高め、サイト滞在時間を延ばし、さらにユーザーに「スキン・イン・ザ・ゲーム(当事者意識)」を与えることができる。

予測市場は、政治、経済、企業イベント、スポーツなど予測価値の高い分野で特に大きな可能性を持つ。金融系メディアのThe Motley Foolは同様のロジックを投資シミュレーターに応用しており、仮想ポートフォリオを構築したユーザーは記事閲覧のみのユーザーの3倍の滞在時間を記録している。これは受動的な関心を、より意図的なコンテンツ消費へと転換する助けとなる。

重要なのは、単なるゲーミフィケーション的ポイントと実際の予測市場の違いである。前者は娯楽に過ぎないが、後者はユーザーのセンチメントや期待に関する有用なシグナルを生成し得る。

リスクと制約

しかし、ベッティング機能の統合には法的・レピュテーション上のリスクが伴う。規制は地域ごとに異なり、アメリカ合衆国の一部の州やEU諸国では、金銭的リワードを伴うシミュレーション型予測市場でさえ賭博法の対象となる可能性がある。PredictItの事例は示唆的であり、同プラットフォームは法的グレーゾーンで運営されていたが、2022年にアメリカ商品先物取引委員会(CFTC)から運営停止命令を受けた。

2026年3月、ジャーナリズム・アドボカシー・アンド・イノベーションのジョーダン・センターは、報道機関とベッティングプラットフォームの提携がジャーナリズムへの信頼を損なう可能性があると警告した。The Deskによれば、ミシシッピ大学のビル・キャシディ教授は、メディア企業がベッティング量に金銭的利害を持つ場合、報道の独立性が損なわれると明言している。

ジャーナリストのダニー・ファントはNieman Labのインタビューで、ESPNとDraftKingsの提携やAssociated PressとFanDuelの契約を「必要悪」と表現し、生き残り競争の中での妥協だと指摘した。

従来、報道ブランドは信頼性に敏感である。読者が編集方針がユーザーの賭けに影響されていると疑えば、ブランドの評判は損なわれる。そのため、多くの出版社は現金ではなくポイント制やファンタジースポーツ型の仮想ベッティングモデルの導入を検討している。

エンターテインメントから戦略ツールへ

ニューヨーク・タイムズの事例は、適切に設計されたゲーム戦略がエンゲージメントメカニクスを包括的な収益化プログラムに組み込めることを示している。こうした形式はユーザー単価(ARPU)も向上させる。複数のプロダクトを横断的に利用する読者は離脱率が大幅に低下するためである。同社によれば、ニュースとGamesの両方を利用する購読者は、片方のみのユーザーに比べ解約率が半分である。

ヨーロッパでは、スカンジナビアのメディアグループSchibstedも同様の取り組みを進めている。同社は複数のタイトルにゲーム要素を統合したサブスクリプションパッケージを導入し、解約率の2桁減少を実現した。

今後、予測市場や軽度のベッティング的仕組みは、大手メディアグループの標準的なツールセットの一部になる可能性が高い。成功の鍵は、エンゲージメント拡大と編集的信頼性の維持というバランスをどう取るかにある。これは従来型メディアが長年かけて築いてきた最も重要な資産である。

この記事は2026年5月21日にロシア語で初出。

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